日本ベゴニア協会東京支部HP

例会は毎月第三土曜の午後1時半。 吉祥寺の武蔵野公会堂にて

つくば植物園 ベゴニアの名前の愉しみ

気象予報士によれば台風は「ジョギング並み」だとか…(-_-;) ノロノロして、全く迷惑なことです。引きこもっているこの機会にブログを書こう(笑)…というわけで、今日は最後の投稿となります。

 

つくば植物園

前回夕菅 (id:yuusuget)さんの秋海棠を取り上げました。ほかにもこの方は、つくば植物園(国立科学博物館 筑波実験植物園 Tsukuba Botanical Garden)の四季折々の記事、イベントの紹介記事」がすばらしいのです。このように検索するとヒットします。→つくば植物園 の検索結果 - 夕菅の日記

実はまだ行ったことがありません。夫は一度お招きにあずかり、教授先生から直々に園の案内を受けたそうです。羨ましいこと!

私はガイドブックだってちゃんと持っているんですよ。(植物園へようこそ - 岩波書店) 100ページほどの冊子ながら、内容は大変濃い。11名の研究員が分担で執筆しており、半端でない熱量に驚かされます。 日々の研究や植物採集の様子、植物などの紹介やバックヤードの活動などが生き生きと描かれ、少しも飽きさせず、読み物としても魅力がある。田中伸幸氏も第3章を受け持ち、海外の収集調査についてお書きになっています。ちょっとした冒険談でお勧め!

ベゴニア協会もつくば植物園にはお世話になっているんですね。新参者の私は、過去の会報を通してしか交流の様子を知ることはできませんけれど、2016年春にベゴニア苗の交換のため、協会からは前理事長、湘南支部の会員お二方がつくば植物園を訪ねました。

協会会員は個人ベースの栽培保存であるから私的な事情に左右されますが、つくばは公的機関(1976年設立の国立科学博物館の研究部門)です。原種を中心とした貴重種の保全に協力いただけるのはありがたいことですよね。

ちなみにこの時の交換苗。

協会からつくば園:クロロスティクタ、アンフィオクサス、オキシスペルマ、クルティイ、クイ、パルマータ、Viet-Nam sp.

園から協会:テウスケリー、マデカーサ・コンセルヴァトワール、イソプテラ、ホモニマ、パルマータ・ヘンリー、パルマータ(大型種)

 

ベゴニアの名前

ベゴニア協会の会員はベテラン揃いです。ベゴニア歴40年、50年という方々もいる。そんな中にいきなり入っていって、最初は戸惑うばかり、チンプンカンプンでした。圧倒的な知識不足ゆえ、飛び交うおびただしい数の名前や個体がわからない。舌を噛みそうな長いカタカナの羅列は、私にとってなんの意味もなさず、書き取りも難しい。

しかしアルファベットで書いてもらうと、英語、フランス語、ラテン語からの類推でほぼ半分は意味がわかる、ないしは暫定的でも私の頭の中では落ち着きます。

たとえばcubensis クベンシスは、「あゝ、キューバのことか!」といった風に。国名ではboliviensis ボリヴィエンシス はボリヴィア、formosanaフォルモサーナは台湾です。

人名も書いてくれればわかる。ボウエレ系はバウアー(Bower)よくある苗字、シゼラモエにはまったく拍子抜け!よく聞くサイズモア(Sizemore)だった。去年亡くなったアメリカの俳優トム・サイズモアを思い出します。

ブランキイblanciiは、フランス名Blanc(意味は「白い」)であるが、由来となったパトリック・ブラン (フランスの国立科学研究所出身。発見した新種は多数。建築の壁面などに植栽する垂直庭園の発案者として日本では知られている)より、今はブラン監督(フィリップ・ブラン。2017年からバレーボール日本代表でコーチを務めた人)の方が有名でしょうか。

ドイツ人の名前にも馴染みが深い。ディートリッヒアナ dietrichiana 私はすぐに女優マレーネ・ディートリッヒを思い出し、シュミチアナ schmidtianaではシュミット首相を…といったふう。

 

妄想の世界に遊ぶ

勝手に意味をあてはめたりして遊ぶことも多いです。

以前2023/12/18/で書いたように、ドラコペルタdracopeltaは私の頭の中では「古代ローマの兵士」。なぜならドラコ draco=竜、ペルタ pelta=戦いの道具としての盾(楯)。盾に竜の紋章がついている、という勝手な想像。

実際は草食恐竜に由来するとわかったあとでもなかなかローマ兵は消えません。

pavoninaパウォニナは何だろう。まさか「亡き王女のためのパヴァーヌ」とは関係ないよね。孔雀の方だろうか。答えは孔雀の羽の色や華やかさからの命名でした。

左:ドラコペルタ 右:ラウェニイ

 

ラウェニイ ravenii2024/01/04/に関する私の妄想は、皆さんの笑いを誘うかもしれません。二羽のカラスが岩にとまっている図です。掛け軸の水墨画っぽく…。ちなみに中国語では岩生秋海棠です。

 raven、何でしょうか?普通名詞か人名、地名かのどれか。私はすぐに「ワタリガラス」を想像しました。しかもオランダ語のraaf (単数)→raven(複数形)。なぜかというとベルギーにいるとき「白いカラス」というオランダ語TVの人気番組をよく見ていたので反応してしまったのです。

しかしのちに(それも2年後にやっと!)人名からの由来だとわかります。このベゴニアは1985年、台湾の嘉義県、海抜500mの岩場で、二人のハンター(中国名)によって発見されました。そしてPeter H. Raven(アメリカの植物学者でミズーリ植物園の園長だった人。Dr. Peter H. Raven)に敬意を表し、献名されたのです。ラーヴェン氏は1936年生まれ、88歳です。

 

アンフィオクサス ナメクジウオ

Begonia amphioxus アンフィオクサス

名前でおもしろいと言えばアンフィオクサス amphioxusですね。(テストに出ないから余計なお世話ですが、複数形はamphioxi アンフィオクサイとなります。ラテン語はやっかいです)

意味は

amphi-=両方、両側 (英語ならboth)

-oxus=尖ったもの (英語ならpointy)

うまく言い当てていますね。そしてこの特徴的な文様の葉っぱといったら!ファンが多いベゴニアです。私も気に入って大切に育てていたんですけど、去年の暑さにやられてしまいました。

ところがこのamphioxus、グーグルで画像検索してみると出てくる多くは魚の写真。しかも小さくて細長くて頼りなげな魚、ナメクジウオといい、背骨を持つ動物の祖先とも言われているそうです。これも形状をうまく言い当てていますね。

調べてみると環境省_せとうちネット:ナメクジウオ

引用

「房総半島から九州までの太平洋岸(瀬戸内海を含む)と丹後半島以南の日本海側に分布しており」…「潮間帯から水深約75mまでの浅海の荒い砂でできた海底にもぐって生息」

愛知県蒲郡市大島と広島県三原市有竜島の2か所が、ナメクジウオ生息地として国の天然記念物に指定されて…」

ナメクジウオはきれいな砂地でしか暮らせないので、近年の環境悪化で数が激減しているそう。私は有竜島には行ったことはありませんが、山陽新幹線三原駅から呉線に乗ったとき車窓から有竜島を見たことがあります。鄙びていい風情の呉線、海岸に沿ってのんびり走ります。窓から下を覗き込むと、浜辺の美しい砂を実際に見ることができます。細かくて薄茶色の砂です。

余談ですが外国人旅行客をちらほら見かけます。皆さん、例外なくうさぎの島(大久野島)に行くのです。忠海駅で降り、歩いてすぐの港から大久野島行きのフェリーに乗って。Rabbit Islandは海外でも有名です。

 

名前の話はいつまでもしゃべっていられます。ベゴニアを育てている人は皆知っていると思いますけど、ダースベイダーとかアミダラとか、スターウォーズの登場人物の名前がついていたり、鬼滅の刃の煉獄さんの名のついたベゴニアなど、楽しいですね。

ベゴニア以外に言及していいなら、クモ目のアシダカグモにデヴィッド・ボウイの名前がついています。三葉虫のほか、エジプトの砂漠で化石として発見された新種の古生物、さらにカタツムリにもつけられているミック・ジャガーはなかなかの人気者です。ファンが多いんです。ご本人はどう思っているんでしょう。そういえばパリ五輪にお孫さんと一緒に観戦の様子、TVカメラに捉えられていました。

 

皆さま、妄想ブログにおつきあいくださり、ありがとうございました。

台風や大雨、河川の氾濫、竜巻など心配だらけですが、どうぞお気をつけてお過ごしください。またいつかお目にかかる日までごきげんよう!